【ScienceAtHome】10分でアイスが作れる凝固点降下実験!

■概要

氷に塩をかけるとどんどん冷たくなっていくということを体感的にご存知の方も多いのではないでしょうか。冬に雪が降った時に雪に塩をかけるとはやく溶けたり、氷に塩を振ることで温度が下がり飲み物を冷やしたりすることができますが、これらは「凝固点降下(ぎょうこてんこうか)」を利用したものです。今回は、この凝固点降下が身近に応用されている例を取り上げながらお家でも楽しく体感できる科学実験をご紹介します。

この凝固点降下を使って、お家でアイスクリームをたった10分で作ることができるのです。実験後にはアイスクリームを実際に食べることが出来てとても楽しい実験なので、ぜひお子様と一緒に試していただけると嬉しいです!それでは今日も、レッツサイエンス!

■凝固点降下とは?

純粋な水は(1気圧で)0℃で凝固しますが、他の物質が溶けていると0℃では凝固しないでより低い温度で凝固するようになります。凝固点が低くなることから、これを「凝固点降下」と言います。

例えば、雪に塩をかけると凝固点が低くなり、気温が0℃以下になっても凝固しない状態となるため、雪がはやく溶けていくということになります。また、このように氷がはやく溶けるとまわりの熱をどんどん奪っていくため、温度が下がっていくのです。

■凝固点降下は、どのようなところに利用されている?

例えば、冬に自動車の冷却水が凍結することを防ぐために、冷却水にエチレングリコールという粘り気のあるアルコールの一種を混ぜておきます。こうすることで温度が下がっても冷却水が凝固しにくくなり、冷却システムの破損などを防ぐことが可能になるのです。

また、氷に塩をかけて温度が下がっていくことを利用し、バーベキューなどのシーンで缶ジュースを素早く冷やすことなどが出来るようになります。氷だけで冷やすよりも、塩をかけることでより低い温度で冷却することが出来るのです。

このように凝固点降下は、水を凝固しにくくしたり、水の温度を下げていったりすることから身近なところでも使われているのです。

この凝固点降下を利用して、ここからはアイスクリームをたったの10分で手作りする方法をご紹介します。手軽にできますので、ぜひ実験してみてくださいね!

■凝固点降下を利用したアイスクリーム作り

今回は、バニラアイスクリームを作ります。アイスクリームの素(牛乳・砂糖・バニラエッセンス)をジュースなどに置き換えれば他の味のアイスクリームも作ることが出来ますので、ぜひ色々な味をチャレンジしてみてくださいね!

【用意するもの】

~アイスクリームの素~

・牛乳 150ml

・砂糖 大さじ1杯

・バニラエッセンス 4~5滴

~凝固点降下実験をするのに必要なもの~

・氷

・塩

・ジップロック 2枚

【実験方法】

まずは、アイスクリームの素を作っていきます。お皿の中で牛乳150ml、砂糖大さじ1杯、バニラエッセンス4~5滴を入れ、よく混ぜます。

これで、アイスクリームの素が完成です!ジップロック(1枚目)の中にアイスクリームの素を入れて、こぼれないようにチャックをしておきます。

続いて、本題の凝固点降下の実験に入っていきます。ジップロック(2枚目)の中に氷を入れます。

この時の温度を測ると、-0.2℃でした。

それではここに塩をかけていきます。氷全体が覆うように全体にかけてみてください。

氷に塩をかけた後の温度を測ると…なんと、-13.5℃!塩をかけることで、どんどん温度が下がっていきます。

塩をかけた氷が入ったジップロック(2枚目)の中に、アイスクリームの素が入ったジップロック(1枚目)を入れます。

ジップロックの外側にタオルなどを巻いて持ち、約5分間振ったり揉んだりします。このとき、塩がアイスクリームの素に入り込まないようにしっかりとチャックを閉めてください。(アイスがしょっぱくなってしまいます。)また、塩をかけた後の氷はとても冷たいので、直接手で持たないように気を付けてください。

5分後にジップロックから取り出してみると、なんと液体だったアイスクリームの素があっという間に凝固しました。

お皿に出してみてもしっかりと凝固していることが分かります!これでバニラアイスクリームの完成です!材料を混ぜてから凝固するまでの全体の所要時間は、なんとたったの10分でした!

 

食べてみるととっても冷たくて美味しいです!甘党の私にとっては砂糖をひとつまみ多めに入れた味が好みだったのですが、お好みに合わせてバニラエッセンスや砂糖の量を調整してみてください。

■まとめ

今回は、凝固点降下を活用して、お家でアイスクリームを作る方法をご紹介しました。氷に塩をかけるとみるみるうちに温度が下がることを体感しながら、最後には美味しいアイスクリームを食べることが出来るのでとても楽しいです!しかも、完成までの所要時間はたったの10分ということで、お家で手軽にお試しいただくことが出来ることもおすすめポイントです。

また、凝固点降下は身近なところにも使われているので、本実験を機に子どもたちが関心を抱くきっかけになると嬉しいです。例えば、雪が降った時に塩をかけたら本当に溶けてしまうのが実験したり、アイスクリーム作りの時に塩以外にも砂糖を氷にかけてみたら温度の変化はどうなるのか実験したりすることもおすすめです。

ぜひ皆様も試してみていただけると嬉しいです!

■注意事項

・小学生など低年齢の子どもが実験を行うときは、必ず保護者の指導のもとで行ってください。

・食べ過ぎるとお腹を壊す可能性がありますので、作りすぎ・食べ過ぎには注意してください。

・氷や塩をかけた氷はとても冷たいので、素手で触らないよう注意してください。

・氷にかけた塩がアイスクリームの素やジュースの中に入るとアイスクリームがしょっぱくなってしまいますので、しっかりとジップロックのチャックを閉めてください

■執筆:五十嵐美樹(Twitter:@igamiki0319)

東京大学大学院客員研究員。東京大学大学院修士課程及び東京大学大学院科学技術インタープリター養成プログラム修了。幼いころに虹の実験を見て感動し、科学に興味を持つ。学部在学時に「ミス理系コンテスト」でグランプリを獲得後、子どもから大人まで幅広い層に向けた実験教室やサイエンスショーを全国各地で主催、講師を務める。特技のヒップホップダンスで魅せる「踊るサイエンスショー」は好評を博している。